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1.高血圧の治療はいつ開始すればいいのですか?
健康診断の機会に高血圧を指摘されるなど、血圧が気になり始めたら、ぜひ、循環器科を受診してください。
「血圧が高い」→「即、治療しましょう」→「薬を服用し始めたけど、余計に体調が・・・」というような経験を患者さんからお聴きすることがあります。これは病院・診療所もしくは健康診断で血圧を計測する場合、10mmHgや20mmHgは高く計測されてしまうことがよくあることですから、いきなり降圧剤(血圧を下げる薬)の内服を開始することでよくみられる過ちです。
「私には降圧剤はあわない」と患者さんが思い込んでしまい、治療を忌み嫌うようになってしまうと、大きな循環器疾患(心筋こうそく、脳こうそく・・・ハンディキャップが長く残る病気)の引き金に なってしまうなど、最悪の結果も考えなくてはいけません。こういう事例はわれわれドクターが患者さんの考え・思い・意見にじゅうぶん耳を傾けることによって回避できることであると考えています。
当クリニックでは自動血圧計の無料貸し出しをおこなっています。家庭血圧(家で、生活の中で、 計測する血圧)を1週間から2週間、しっかり計測してから、治療計画を提案することにしています。まわりくどいかも知れませんが、この期間の血圧測定を割愛すると、「薬を増やしてみましょう」「減らしてみましょう」「種類を変えてみましょう」とむしろ治療に時間がかかってしまうのです。2.どうしても血圧を下げる薬は飲みたくないのですが?
外来診療をしていますと、どうしても降圧剤(血圧を下げる薬)を内服したくないという患者さんに出会うことがあります。何に意地を張って拒んでいらっしゃるのか?治療コストが気になっていらっしゃるのか?様々なケースがあると思われます。
1番目のケースでは、ご自身を病気と認めたくないということと解釈しますが、見て見ぬふりをしてさらに大きな病気、ハンディキャップが長く残る病気(脳こうそくや心筋こうそく)を発症させてしまっては、長い人生(平均寿命は80歳という時代なんですよ)後悔が残ることになってしまいます。女性の方が平均寿命が長いのは、男性よりまじめに降圧剤を内服するからだ、という説もあります。佐々木も血圧は高くないのですが、体調を崩して診療所を休診にするわけにはいかないので(別の言い方をすると、長生きしたいので)、サプリなどと同じ感覚で降圧剤をちょこちょこ内服しています。考え方次第なんです。
2番目のケースの回答は、1番目でも述べた内容と重複しますが、大きな病気、ハンディキャップが長く残る病気(脳こうそくや心筋こうそく)を発症させてしまっては、トータルの治療コストは比較するまでもありません。また、後発品(ジェネリック)や配合剤(複数の種類の薬を1錠の中に入れたもの)の利用も一つの回答になると考えられます。さらに当クリニックの治験外来のご利用(治験外来の間は製薬会社から提供される降圧剤を内服していただくことになります)も治療コストを削減する提案です。
3.血圧を下げる薬の副作用が怖いのですが?
そうですね。確かに薬を飲みたくない理由に副作用という面もありましたね。
メディアで名前の通っている医師の著書の宣伝などが皆さんを迷わせているんでしょうね。降圧剤を内服していると、癌になるとか、認知症になるとか。これも冷静になって読んでくださいね。降圧剤が開発されて以降、寿命が延びたのですが、当然、ご高齢の方に多い病気である癌や認知症が増えるのは当たり前ですからね。「高血圧を放置して脳卒中になって、早く人生をたたんだら、癌や認知症にならないですよ。」と言いたいんでしょうかね?例えるなら、「栄養状態が良くなって国民病とまで言われた結核が減った分、糖尿病が増えた。」というのと、同じ構造です。ある病気を克服したら、別の問題が持ち上がってくるのは、一定、容認しなくてはいけないと佐々木は思います。
4.いちど血圧を下げる薬を飲み始めたら離脱できないと聞きましたが?
佐々木は適切な指導の下、降圧剤の内服から離脱できた患者さんは何人も経験しています。ですから、答えは「離脱することは可能。」です。ただしハッピーなかたちで離脱できているケースばかりではないことも付け加えておかなければならないでしょう。
こんな患者さんがいらっしゃいました。食道癌になってしまって食事が喉を通らず、見る見るうちに血圧は正常となり、降圧剤が不要にはなったのですが、決して良かったとは言えません。「癌になったつもりで食事療法をがんばれるなら、降圧剤から離脱できること」「降圧剤を内服するくらいで日々の生活が維持できるなら、感謝しなければいけないこと(多少乱暴な言い方かもしれませんが)」などをこの患者さんは教えてくれました。
江戸や明治の世の薬そのものが開発されていなかった時代、もしくは、薬はあっても庶民には経済的な理由から手が出なかった時代などと比較すると、正直、私たちはいい時代に生きているなぁと思いませんか?多くの場合、降圧剤による血圧管理は長期間に及ぶのは間違いありませんが、長生きできる魔法の薬・不老長寿の薬とまでは言い過ぎとしても、長くお付き合いするのですから、降圧剤をそんなに毛嫌いしなくてもいいんじゃないでしょうか?
5.家庭血圧は いつ計測するのが適切ですか?
Q&A01でも『家庭血圧の測定』の大切さを記載していますが、これに加えて「何時ころに測定するのがいいのですか?」に答えさせていただきます。
確かに日に何度も測定するわけにはいきませんから、無理からぬご質問です。○○時という答えではありませんが、究極的に一回計測するなら、血圧の(24時間の上がったり、下がったり、をあらわす)日内変動を考慮して、『起床直後、朝食を食べる前に計測してください。』という答えにしたいです。『朝8時に計測してください。』と指導しても、「休日は9時まで寝てますねん。」っていう患者さんもいらっしゃいますからね。
血圧の日内変動に簡単に触れてみます。血圧は降圧剤の内服の有無を問わず、24時間のあいだに、30から40mmHgも変動しています。収縮期血圧と拡張器血圧の(上の血圧と下の血圧)の差じゃないんですよ。収縮期血圧だけで24時間のあいだに30から40mmHgもの変動があるということです。拡張器血圧は収縮期血圧ほどではありませんが、同じくらいの変動はあります。変動のパタンを分類すると、通常は夜間(睡眠時)に下降するのですが、夜間の血圧の下がり方が日中の血圧に比較してあまり下がらないものをnon-dipper型高血圧と表現します。通常の夜間に血圧が下がる変動が認められるものはdipper型高血圧と表現します。
早朝に高い血圧値が計測されてしまう患者さんの多くは、睡眠 中に血圧が下がりきらないnon-dipper型高血圧の可能性が大きいと推測しています。糖尿病、心不全、睡眠時無呼吸症候群など基礎疾患をお持ちの患者さんでnon-dipper型高血圧を示すことが多いと報告されていますし、non-dipper型高血圧の患者さんは将来的に脳血管/心血管の事故を引き起こすことが多いと報告されています。当診療所で血圧管理中の患者さんなら佐々木が『起床直後の家庭血圧を計測しましょう。』と繰り返し案内しているのをよくご存知でしょう。こういう背景があって繰り返し案内しているのです。
6.塩分制限は効果があるのですか?
塩は化学式でNaCl(ナトリウムと塩素の化合物)ですね。ナトリウムは皆さんが病院やクリニックから手渡してもらう検査項目の一覧にも入っています。血中ナトリウム濃度として頻回にご覧になっているはずです。
Lagoらは米国で行われた"フラミンガム研究"の中で、約2200人の4年間の追跡結果として、血中(血清)ナトリウム濃度の上昇が、将来の高血圧症リスクと関連しないと報告しました。(Journal of Hypertension, 2008)
「じゃあ、減塩しなくてもええやんか。」と短絡的に考えてはいけません。
Formanらはオランダで行われた大規模研究"PREVEND"の中で、約5600人の6年間の追跡を行ない、尿中のナトリウム濃度の上昇が、血管の損傷の指標と考えられる尿中アルブミン値と尿中尿酸値の上昇を引き起こし、ひいては高血圧症へ誘導することを報告しました。(Circulation,2012)
ヒトは血中ナトリウム濃度を(ナトリウム濃度だけではないのですが)一定に維持しようとする機能(ホメオスタシス)を持っていますので、Lagoらが得た結論は当然の結果といえば、当然の結果なのですが、注目すべきは、Formanらが報告した排泄されるナトリウムの指標である尿中ナトリウム濃度の大さと高血圧の相関関係です。
たくさん塩分を摂取しても、その分だけ尿中に排泄するので血中ナトリウム濃度こそ上昇しませんが、塩分を体外に排泄するこの作業工程が血圧を上昇させるひとつの危険因子となると解釈して欲しいと思います。
7.降圧剤の一つ、カルシウム拮抗剤を内服している方が心筋梗塞になりやすいというのは本当ですか?
「カルシウム拮抗剤を内服している患者さんのほうが心筋梗塞をより多く発症している」と1995年の論文でPsaty らによって報告されたことから、このようなご心配が広がっているものと思います。(Journal of the American Medical Association,1995)
Psaty らの論文ですが、症例対照研究(case control study)という手法に分類されます。心筋梗塞を発症した高血圧の患者さんと心筋梗塞を未発症の高血圧の患者さんとを比較するという研究だったのですが、カルシウム拮抗剤を内服していた患者さんにすでに狭心症を合併症として持っている方が多かったことがわかっています。病気の事に詳しい方はここで「なるほど」と思われるかもしれませんが、狭心症は心筋梗塞の一歩手前ですし、逆の見方をすれば、カルシウム拮抗剤は降圧剤(血圧を下げる薬)ですが、あわせて狭心症の治療にも適応があるので、佐々木もよくこのような処方をさせていただくのですが、狭心症を持っているかもしれない、もしくは、すでに狭心症を持っている高血圧の患者さんには、二つの疾病に効果が期待できるカルシウム拮抗剤です。米国のドクターの処方の書き方も日本と変わりません。二つの疾病に効果を期待するという治療方針の下、カルシウム拮抗剤が選択されたのでしょう。
『カルシウム拮抗剤を内服している患者さんに狭心症を合併する患者さんが多く紛れ込んでしまっていたので、狭心症が増悪して発症する心筋梗塞にまで至ってしまった患者さんも必然的に多くなってしまった。』と解釈するのが適切でしょう。このように研究の初期設定の段階(患者さんを選び出す段階)で、すでに偏りがあることが結果に大きく影響を与えてしまうことがあります。ちなみに、この偏りを“バイアス”と呼びます。
「ふんふん、そこまではわかった。でも結局、心筋梗塞になってしまうの?」という疑問がでてきますよね。そこは我々にとって辛い、いえいえ、患者さんにとってもっと辛いことなんですが、心筋梗塞の発症を内服加療によって先延ばしすることまでは出来るのでしょうが、発症を完全に阻止するまでのことは出来ません。でも重篤な疾患の発症を先延ばしすることが出来れば、寿命も延びます。我々、循環器内科医だけでなく、ほかの分野の医師の努力も相まって日本は長寿世界一を達成できているのです。
8.カルシウム拮抗剤に発癌性はあるのですか?
カルシウム拮抗剤を内服している患者さんの発癌率が有意に大きいとPahor ら(Lancet,1996)が報告しました。服薬期間が長いほど発癌率が大きかったのなら、本当に相関があるんだろうけど、その記載がないとか、ツッコミどころはたくさんあるようで、いまだに決着していないようです。製薬会社のホムペには反証(Jick Hら Lancet , 1997)が記載されていたりします。
ただ、いまだに乳癌との因果関係(Christphar ILら Journal of the American Medical Association, 2013)や口腔外科領域の癌との因果関係(Friedman GDら Archives of Internal Medicine, 2012)などが報告されていることを考慮すると、この論争はまだまだ続きそうです。
カルシウム拮抗剤と胃腸障害の因果関係について述べた論文(Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2012)もあり、これについても、ドクターの間では賛否両論あるようです。発癌は将来の話で、現実に眼の前でおこっていない話ですが、このように実際に患者さんが眼の前で副作用を思わせる症状(胃腸障害などはその代表だと思います)を訴えていらっしゃるのなら、『○○先生の論文によると、そんな副作用はあり得ないです。』なんてことを言う立場はとりません。代替の処方を検討することになると思います。
9.高血圧症の原因は動脈硬化ですか?
ヒトの体循環は電気回路に例えられます。
心臓は電池;心臓は血液を送り出す源です。電池だって電気を送り出す源って意味で、電源って呼び方もありますからね。電池にかかるのが電圧で、心臓にかかるのは血圧です。
血管は導線と抵抗;導線を流れるのは電流で、血管を流れるのは血流です。ここからがちょっとむつかしい。皆さんが考える血管というのは眼に見える大きさのものです。細血管~毛細血管はまず眼に見えません。毛細血管の直径の10μm程度というと、1mmの百分の1です。まず肉眼では見えません。この肉眼で見えないような血管が電気回路で言う抵抗として働きます。抵抗として働く細血管~毛細血管のことを抵抗血管と呼びます。
さて、ここで中学校の理科で学習したことを思い出しましょう。
Ω(オーム)の法則と聞いてすぐに公式が出てきますか?電圧=電流×抵抗(E=IR)ですね。電流が一定ならば抵抗の値が大きければ電圧が大きくなるという公式ですね。血圧の世界にも、ほぼこの公式が当てはまって、血圧=血流×抵抗血管と考えていいわけです。ですから血圧上昇は抵抗血管の抵抗が大きくなった時に起こるのです。
何度も強調しますが、導線は電流を通すだけの通り道であるのと同じく、血管は血液が流れるだけの管に過ぎません。肉眼で見えるくらいの血管は先ほど述べたように、電気回路では導線ですから、血圧上昇には関わりません。
動脈硬化は肉眼で見えるくらいの動脈という血管に起こるものです。しかも高血圧が長時間続くことで、高血圧の結果として起こるものです。決して動脈硬化が高血圧を引き起こすものではありません。
10.血圧の変化にどのような因子が影響しますか?
血圧は常に変動していることが知られています。その変動には3種類有りあります。“短期変動” 血圧の変動には3種類有りあります。下の図に示すように、“短期変動” “昼間変動” “日内変動”と時間軸で分類されています。(Conway, Journal of Hypertension, 1986) 佐々木はこれにもう一階層上の時間軸である“季節変動”を追加したいと考えます。
“短期変動” 主に自律神経活動によって規定されます。
“昼間変動” ヒトの精神的/身体的な活動の影響が出る部分ですね。職場で血圧が高いとか、ですね。
“日内変動” 主に睡眠/覚醒のリズムで規定されます。
“季節変動” 主に気温という環境要因ですね。
血圧の上がり下がりに関係する因子を下の表にまとめてみます。
■血圧上昇(交感神経が強く働く)
(短期変動) 短い安静後の測定・喫煙後・尿意の我慢(昼間変動) 業務中の測定・測定の習慣なし・麻痺側の測定
(日内変動) 覚醒 起床
(季節変動) 冬季・寒冷
■血圧上昇(迷走神経が強く働く)
(短期変動) 長い安静後の測定・食後・排尿後(昼間変動) 休憩中の測定・測定の習慣あり・健側の測定
(日内変動) 覚醒 起床
(季節変動) 夏季 暑熱
血圧の上がり下がりはどのような因子によって規定されるか整理できてきましたね。ここで説明がまだ済んでいない語句が入ってきています。交感神経と迷走神経です。交感神経と迷走神経、2つの神経あわせて自律神経と呼びます。逆に自律神経は交感神経と迷走神経の2つで構成されているという言い方もできます。心臓に対して交感神経はアクセル、迷走神経はブレーキとして働くことで血圧や心拍の上がり下がりを調節しています。
11.血圧をいつ計測しても違う値が出るのはなぜですか?
血圧は常に変動していることが知られています。その変動には3種類有りあります。“短期変動” “昼間変動” “日内変動”と時間軸で分類されています。(Conway, Journal of Hypertension, 1986) 佐々木はこれにもう一階層上の時間軸である“季節変動”を追加したいと考えます。
この質問は“日内変動”で説明できる事象と思います。血圧は、ある程度、原則的な変動を24時間周期で上がり下がりしていると考えてください。この変動を“日内変動”と呼びます。
収縮期血圧だけに着目しても、血圧は24時間で40mmHg程度の変動があると考えてください。これは高血圧患者さんだけでなく、正常血圧の方でも収縮期血圧は24時間で40mmHg程度の変動があることを意味します。高血圧症の患者さんも、健常者も、数値こそ違いますがよく似た変動を示します。起床とともに朝に血圧が上がって、夕刻から下がり始めて、深夜に底をうつという変動パタンが一般的です。決して不規則ではなく、この一定の変動パタンを24時間周期で繰り返していると解釈してください。この変動パタンが“日内変動”です。
したがって計測するたびに血圧の値が変化しているので「不安定だ。」と思い込みがちですが、この変動パタンを念頭に置いてご自身の血圧を眺めてみてください。リズムが浮かび上がってくるはずです。また、「今日は血圧が高い。」という言い方をよくしがちで、その際に「今日は一日中血圧が高い。」と受け止めてしまいがちですが、たまたま血圧が高い時間に計測しただけであって、別の時間で計測すると「下がっている。」ことが充分推測されます。
12.測定二回目の血圧が下がるのはなぜですか?
血圧は常に変動していることが知られています。その変動には3種類有りあります。“短期変動” “昼間変動” “日内変動”と時間軸で分類されています。(Conway, Journal of Hypertension, 1986) 佐々木はこれにもう一階層上の時間軸である“季節変動”を追加したいと考えます。
「1回目測定の血圧値と2回目測定の血圧値って、少し違うんだけど、どう評価したら良いのでしょうか?それにだいたい2回目測定の血圧値のほうが低いことが多いんだけど、これって、なぜ?」このような質問は“短期変動”で説明できる事象と思います。
“短期変動”は自律神経活動に代表される血圧の上がり下がりです。自律神経は交感神経と迷走神経の2つで構成されているのですが、疼痛(痛み)に対する交感神経と迷走神経の反応を下の表で説明します。
まさしく疼痛を自覚している最中 交感神経優位・・・血圧が上がりやすい
疼痛から解放されていく過程 迷走神経優位・・・血圧が下がりやすい
血圧測定の際には、カフを上腕に巻きつけて圧をかけてギュウッと締め付けた後、圧を緩めていきます。この一連の血圧計測の動作の中での締め付けによる痛みの状態(最中なのか?解放の過程なのか?)が自律神経の状態(交感神経優位になっているのか?迷走神経優位になっているのか?)に影響を与えることで、血圧の上がり下がりが規定されます。
『一回目の血圧測定の際の締めつけによる痛みからの回復の程度によっては、血圧は上がることもあり、下がることもある。すべての場合で下がるとは言い切れない。』というのが正解のようです。ただ佐々木の印象としては『疼痛から解放されていく過程という状態で、二回目の血圧測定となる方のほうが多いようで、血圧下がり気味となることが比較的頻繁に見られる。』と結論したいと思います。
13.寒い時期の入浴に際して注意することは?
多くは冬季に起こっているであろう入浴中の死亡事故を例に挙げて注意を呼びかけたいと思います。この入浴中の死亡事故は全国で年間約1万4000人と推測されているそうです。交通事故による死亡者数、平成24年度で約4400人、と比較してみてください。なんと約3倍です。
まず寒い時期には血圧が上がりやすいという“季節変動”と日本人の生活習慣である入浴という行為による“短期変動”とをあわせて、そこに潜む危険を検証してみましょう。
環境の寒暖に起因する血圧の変動が脳卒中や心筋梗塞を引き起こし、ついには死に至らしめることがあります。入浴中の死亡事故のうち、多くはこの血圧の変動が原因と考えられています。この血圧の変動の引き金となる急な温度変化をヒートショックと表現します。
我々、日本人の平均的な冬の時期の入浴を血圧という視点で観察していきます。まず、暖かいリビングから肌寒い脱衣場へ移動して、しかもそこで服を脱ぐのです。血管が収縮して、血圧が上がります。続いて湯舟につかることで(日本人は熱いお風呂が好きですからね)、血管が拡張して、血圧が下がります。風呂場から脱衣場に出ることで再び血管が収縮して、血圧が上がります。
血圧が何回も大きく変動することで、脳卒中や心筋梗塞が発症する可能性のある危険な場面が数多く作り出されるわけです。